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雲の中へ

2008/09/24 [23:15]

六十五番三角寺で愛媛県は終わり、次の六十六番雲辺寺は、香川・徳島の県境の峰の上に建つ。


三角寺も山の中にあり、結構時間を消費していて、
雲辺寺の麓の街、豊浜に着いたときには既に日が傾きだしていました。
標高900メートルを今から登るのは無茶かな?
と迷いながらも、とりあえず自転車で、前方にそびえる山並みに近づいていきます。
だんだん勾配がきつくなってきました。
八十八ヶ所の最高地だけあって雲辺寺にはロープウェイが引かれていて、
歩き遍路でない人は普通これを利用して行く。
当然僕としては、自分の足で行きたいが、日没が近い…。
結論を出せないまま、ロープウェイ乗り場に着いてしまい、
いざ着いてしまうと、人間の思考とは不思議なもので、
人波に流されて、迷わずキップ売り場に並んでしまいました。


待つこと5分、
(ん?)
遠くに、ちっちゃな看板が見えました。
<雲辺寺登山口こちら→(徒歩2時間)>
…徒歩2時間ということは往復3時間半…今3時半だから帰りは…7時!
無理だ。危険だ。やっぱロープウェイだ。
諦めて列に並ぶ。
あと3人…
あと2人…
あと1人…

いいのか?
いいのか!?しゃぶ!


自販機に駆け寄り急いでポカリを買い求め、
登山口に突進しました。


雲辺寺に通じる登山道には、いくつかルートがあるようで、
いわゆる、「へんろ道」、巡礼者が昔から使い続けている道は、
こことはどうやら別らしく、
ここは誰かが歩いた形跡が薄く、うっそうとしていて、
何より道をふさぐ蜘蛛の巣がスゴい。
マンガみたいな巨大蜘蛛がタコ糸で編んだみたいな蜘蛛の巣を張っていて、
それを破りながら進むのだが、
このペースじゃ日没がまじでやばいぞ!
ということで汗のうえに汗がまた吹き出ました。


吊りかけるふくらはぎを励まして、大師さまと二人、
苔が付いた石段を駆け、危なっかしい崖を這い、ぬかるんだ土を踏んで、登って登って登り倒す。
そうして午後五時、ようやく雲辺寺にたどり着きました。
海も街も、通ってきた道も、霞んでしまってよく見渡せない。
涼しい風が吹き抜ける雲辺寺は、
本当に雲の中にありました。


しかし呑気に感涙してはいられません。
すぐさま来た道を引き返します。
1時間半で登った道は1時間で下れるかと思いきや、
かなり急いで登って1時間半なので、
下りも1時間半かかりました。(下りは楽だけど、急ぎようがないのだ)
さっきまで人で溢れていた、がらんどうのロープウェイ乗り場の駐車場に困憊して帰ってきたとき、
ちょうど西の地平線に日が沈んでいくところでした。
街を見下ろし、若者がひとり吹くトランペットの音が
何かの始まりを告げるように、高らかに、響いていました。


  遍路旅険しさこそが愛おしい泥の眠りとこの高い空




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